Dr.Manaが顧問を務める日本ヘンプ協会の第3回学術講演会が12月6日渋谷長井記念ホールにて開催されました。
会場は立見が出るほどの満席で、業界関係者の日本ヘンプ協会への期待の高さを実証していました。開催の冒頭で、松原仁衆議院議員から、大麻取締法改正案が参議院で可決された旨のご報告があり、ここから1年を掛けていよいよ具体的な規則設定に入っていくことになります。
講演会は内容盛り沢山で、小児アトピー性皮膚炎に対するCBDバームの症例報告、ご親交を頂く小関隆獣医師からはペットへのCBDの活用について教育講演がありました。
最も印象に残ったのは、湘南医療大学薬理学研究室舩田正彦教授による「合成カンナビノイドの薬理学と毒性評価」と題した特別講演でした。ラボで人工的に作った一部の合成カンナビノイドは、組成が近似した大麻草由来の天然カンナビノイドに比較してはるかに強い毒性を有するというお話は、昨今の合成カンナビノイドを使用した食物の健康被害と関連し、とても重要なご発信となりました。また、イタチごっこの様相を呈する合成カンナビノイドの規制について、如何にして包括的且つ合理的に規制するかを、法律家の立場からではなく薬理学者の視点からのご解説は、今後の法規制の方向性を示唆するものとなりました。
今回、大麻取締法の改正に関しては、以下の方向性が確認されました。
改正大麻取締法では、大麻草の医療用途に向けた合法的栽培に関するライセンス等の規定が集約され、それに伴い、現大麻取締法の骨格部分は、麻薬等取締法に集約されることになる、ということです。これが意味することは、大麻が法律上、麻薬にカテゴライズされるということです。そしてこれは、大麻の関連捜査において「囮捜査」が可能になるということも意味します。
また、CBDについては、医薬品としての開発、使用が容認されていく中で、CBDの食薬区分に関し、「専ら医薬品」にカテゴライズされた場合、化粧品としての使用が制限される可能性が想定されています。また、オイル、ティンクチャーなど食品として使用する場合も、CBDという直接的成分表記ができなくなる可能性も取り沙汰されています。厚生労働省からは非公式に、「CBD医薬品であるエピデオレックスが日本で承認されても、既に市場ができている嗜好性CBD商品を販売禁止にすることはない。」という主旨のコメントがあるとのお話もありますが、販売ができてもCBDという表記ができないのでは普及に拍車が掛かりません。これからの1年間で行われる具体的な法規制の内容を我々は注視して行かねばなりません。このように、今回の大麻取締法改正は、カンナビノイド研究、CBDの医療用途への拡充には大きな後押しになることは明白ですが、コモディティーとしてのCBD製品の普及、拡大には一定のブレーキがかかる可能性もあります。また、法規制が厳格化され、大麻関連違反が厳罰化されていく中で、業界全般の関係者から不届き者が出るような事態となれば、規制や世論にいっそう逆風が吹く懸念も生じ、今後は業界全体が一つに纏まって自主規制を確立し、安全性とコンプライアンスを担保することが急務となると予想されます。そのためにも、乱立する関連学会が早期に一つに纏まるべきだとするご発言が参加者からあったことは、大変示唆に富む発言と感じました。