用語の整理

用語整理の重要性

日本では所持することすら禁止されている大麻(草)は、一般的にはカナビス、或いは大麻草という植物そのものか、または、大麻草の花や葉を使用して作られた”物”を指します。大麻草には多くの化学成分が含まれており、その中にはカンナビノイドと呼ばれる化合物が含まれています。カンナビノイドには多くの種類があり、その中で最もよく知られている生理活性成分がCBD(カンナビジオール)とTHC(Δ9-テトラヒドロカンナビノール)です。大麻とCBDは、当然関係性はありますが、上述の通り次元の異なるもので、大麻=CBDではありません。大麻は、THCを含むため、精神活性作用があるとされていますが、CBDには精神活性作用はなく、潜在的にさまざまな健康効果を持つとされており、抗炎症作用や鎮痛作用、抗不安作用などの効果が研究や報告により示唆されています。また、THCを微量に含むCBDは、てんかんのような特定の疾患の治療に対する有望な効果が報告されており、一部の国では医療用として使用されています。大麻にはTHCが含まれるため通常は法律によって規制されており、国や地域によっては合法や違法の扱いが異なります。一方、THCを含まないCBDは、多くの国や地域で合法的に使用されており、CBD製品が市場に出回っていますが、それでも法律に従って製造し、輸入販売、使用することが重要です。

大麻草を英語で表現する場合、カナビス(cannabis)と呼んだり、ヘンプ(hemp)と呼んだり、或いは、マリファナ(malijuana)と呼ばれる場合もあります。この呼び方一つで、本来日本では合法で安全性にも問題がない大麻草の一部から抽出した成分が、あたかも違法薬物のように印象付けられてしまうことが度々発生しています。大麻草やCBDに関して説明する場合には、その法律上の定義、植物学的分類を正確に理解し、日本語でも英語でも正しい共通言語を使用して説明する必要があります。そのプロセスを怠ると安全性や法令遵守に関して不必要な懸念や誤解が発生すると感じるからです。以下では、大麻草を中心に日本で『麻』と呼ばれる植物に関してその用語と定義を確認します。

 

大麻草に関する正確な用語 法律上の定義と植物学的分類

 
(1)法律上の定義(アメリカ)
 

大麻草は、英語ではカナビス(cannabis)です。しかし、これを法律上で定義する場合、精神高揚性があるTHCの含有量の違いにより、0.3%以上はマリファナ(marijuana)と呼び、0.3%以下をヘンプ(hemp)と呼んで明確に区別しています。日本で大麻草の栽培ライセンスを保有する30余りの農家が栽培するトチギシロという品種にはTHCは全くと言って良いほど含まれていません。高度な分析装置を使っても検知されないほど少ないという意味です。つまり、トチギシロは英語で言えばカナビス及びヘンプに該当し、マリファナではありません。しかし、だからといって栽培ライセンスを保有しない者がトチギシロを所持したり栽培したら大麻取締法の処罰対象となります。大麻草であることには変わりはなく大麻取締法は大麻草の所持そのものを禁じているからです。

 
(2)植物学的分類
 

麻のシャツを思い浮かべてください。日本語では通常「麻」と呼びますが、シャツの品質表示ではフレンチリネン、リネン、或いは、ラミーという表記がされます。一般の消費者にとっては一括りで”麻のシャツ”です。しかし、大麻草は、植物学的にはバラ目、アサ科の1年草で、英語ではヘンプと呼ばれます。大麻草を植物学的分類からマリファナと呼ぶことはありません。ヘンプは衣料品として利用される場合、日本での品質表示はヘンプ、もしくは指定外繊維と表記されることもあります。一方で、馴染みが深い、リネンはバラ目アマ科の一年草である亜麻(英語ではフラックス)を原料とする麻繊維であり、同様にラミーはバラ目イラクサ科の多年草である苧麻(英語ではラミー)を原料とする麻繊維です。衣料品に利用された場合は、各々麻(リネン)、麻(ラミー)と表記されています。つまり、3つの”麻”は植物学的には異なるものです。CBD製品を販売する業者の一部や、CBDの院内処方を開始したクリニックの中には、 大麻というネガティブなイメージを回避するために、CBDを大麻草(の合法部位)由来と表現せず、”麻”由来と表現しているという話を聞きます。しかし、このような詭弁は、合法的に生産されたCBDの健全な普及と正確な理解を阻害すると考えています。 

日本で栽培されるトチギシロ品種

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