大麻取締法改正 続報3

一般社団法人日本ヘンプ協会からいかに添付する情報を入手しましたので報告いたします

【日本ヘンプ協会 メールニュース】大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案について(Part.2)

 

大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/001159661.pdf

(令和5年10月24日提出 厚労省ホームページに掲載された概要より引用)

 

3.大麻草の栽培に関する規制の見直しに係る規定の整備 【大麻取締法】

(※)大麻取締法の名称を「大麻草の栽培の規制に関する法律」に改正

①大麻草採取栽培者の免許を区分し、大麻草の製品の原材料として栽培する場合を第一種大麻草採取栽培者免許(都道府県知事の免許)に、医薬品の原料として栽培する場合を第二種大麻草採取栽培者免許(厚生労働大臣の免許)とする。 

②第一種大麻草採取栽培者について、THCが基準値以下の大麻草から採取した種子等を利用して栽培しなければならないこととするなど、所要の規制を設ける。 (※)大麻草採取栽培者が成分の抽出等の大麻草の加工を行う場合や、発芽可能な大麻草の種子の輸入を行う場合に、厚生労働大臣の許可を要することとする等の規制を設ける。

③大麻草の研究栽培を行う場合は、大麻草研究栽培者免許(厚生労働大臣の免許)を要することとする。 解説:改正された「大麻草の栽培の規制に関する法律」では、大麻草採取栽培に第一種大麻草採取栽培者免許(都道府県知事の免許)、第二種大麻草採取栽培者免許(厚生労働大臣の免許)と区分されるが、大麻草の研究栽培を行う場合にはこの二種の区分とは異なる「大麻草研究栽培者免許(厚生労働大臣の免許)」が必要となる。 

施行期日「公布日より1年を超えない範囲内で政令で定める日」(3.大麻草の栽培に関する規制の見直しに係る規定の整備㈰及び㈪については、公布日より2年を超えない範囲内で政令で定める日)

 

【解説】 日本国内における大麻栽培者は1954年時点(ピーク時)では37,313名でしたが、令和2年までには30名と著しく減少し、栽培面積も1952年時点(ピーク時)では4,916 haでしたが、令和2年には約7 haまで減少しています。このため、古くから伝わる伝統的な麻文化の継承が困難となっていました。一方、脱炭素社会を目指す最近の世界的潮流の中で、CO2削減やエコ資源として活用できる産業用大麻(ヘンプ)が欧米を中心に注目されることとなり、我が国でも大麻草の産業利用(医薬品、CBD、バイオプラスチックなど)のための栽培を認可する必然性が生じてきました。しかしながら、これまでの大麻栽培許可の審査基準は以下のように伝統文化の継承を目的とし、大麻製品以外の代替品が存在しない場合に限るなど厳しいものであり、以下がその典型的な審査基準ですが、各都道府県でほとんど同一の審査基準が用いられてきました。 

 

■現在まで各都道府県で用いられてきた大麻栽培免許の審査基準■

・申請者が、地域の祭事等を司る者で組織される団体、又はその団体に所属し代表としてこの団体を管理する者等、伝統文化を継承する者であり、かつ、栽培目的が、地域の伝統的祭事等伝統文化の継承のために必要不可欠で社会的有用性が認められるものであること。

・必要とする大麻製品の代替品として適当なものが無い等、その栽培目的に十分な必要性が認められること。 

・大麻製品の供給が途絶える等、栽培目的に、大麻製品を必要とする者が自ら大麻栽培者免許を受けて大麻栽培をしなければならない緊急の必要があると認められること。

(※千葉県 大麻取締法に規定する免許及び許可の申請に係る審査基準 より引用

https://www.pref.chiba.lg.jp/yakumu/tetsuzuki/330/documents/01h22sinsa.pdf )

 

違法な目的や個人的な嗜好目的で栽培しようとする者を排除するために上記のような審査基準が設けられたと推察されますが、それによって新たに大麻栽培免許を取得することは極めて困難となり、医薬品製造を目的とする栽培など新しい産業を創出するための麻活用の道が閉ざされてきたといえます。 今回の法改正においては「大麻草の栽培の規制に関する法律」が新設され、その総則において以下の2種類の栽培者免許が定義されました。

 

ア 「第一種大麻草採取栽培者」とは、都道府県知事の免許を受けて、大麻草から製造される製品(大麻草としての形状を有しないものを含み、種子又は成熟した茎の製品その他の厚生労働省令で定めるものに限る。)の原材料を採取する目的で、大麻草を栽培する者をいうものとすること。

イ「第二種大麻草採取栽培者」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する医薬品の原料を採取する目的で、大麻草を栽培する者をいうものとすること。 

 

 アで定義されている第一種大麻草採取栽培においては、種子又は成熟した茎の製品しか作れないことやTHCが含まれるものは栽培不可という点では従来の法律と同様ですが、THCが基準値以下(具体的な基準値は別途、政令で定められます)であれば栽培可能となったことは一歩前進したといえます。また、これまでは国内において栽培者が大麻草からCBD等の成分を抽出することは法的にグレイゾーンでしたが、今回の改正法においては厚生労働大臣の許可があればそれらが可能となることが明確に記載されたことも、大麻草栽培の目的が伝統文化の継承以外にも拡大されたものと前向きに解釈できます。 なお、THCを基準値以上に含む大麻草及びTHC関連物質を「麻薬」として法的に定義したことによって、従来の大麻取締法が制定された1948年ではCBDやTHCは発見されておらず、それらの法的位置付けが不明確であったことから生ずる大麻取締法の問題点が解消したといえます。同時に、THCを基準値以下にしか含まない大麻草(「ヘンプ」と呼ばれる)やCBDは麻薬には該当しないことが明確になり、第一種大麻草採取栽培免許を取得することでヘンプの産業応用に向けた規制緩和になるものと期待できます。 ちなみに、大麻を取り締まる規則の部分を麻薬及び向精神薬取締法に移行することによって、従来の大麻取締法は栽培関連のみとなり、大麻取締法の名称も「大麻草の栽培の規制に関する法律」に改正されました。 

イで定義されている第二種大麻草採取栽培においては、種子又は成熟した茎といった部位には縛られず、またTHCの含有濃度に関わらず大麻草から医薬品を製造することが可能となっており、今回の法改正における大きな改善点といえます。もともと、麻薬及び向精神薬取締法及び薬機法の規制下で麻薬性医薬品の製造免許が取得可能となっていることから、それに準じた規定といえます。但し、第二種大麻草採取栽培で基準値以上のTHC含有大麻草を栽培する場合には、非常に高いセキュリティを要求されること(路地栽培は不可など)と、医薬品製造販売業を有する製薬会社が主体的に行う大麻栽培事業が優先されることが推察されます。

 大麻栽培に関する改正法の施行は、交付日より2年以内と定められています。 CBDなどTHC以外のカンナビノイド成分を医薬品として申請する場合、種子や成熟した茎から抽出したCBDであれば(麻薬や大麻から除外されているため)第一種大麻採取栽培免許を持っている者が医薬品原材料として供給することが可能と考えられますが、花穂や葉など種子と成熟した茎以外の部位から抽出したいのであれば第二種大麻採取栽培免許を持っている者しか供給できないことになりますので、カンナビノイド物質を高濃度に含む花穂からCBDを採取したいと考えている栽培者はそのことを十分に認識しておくことが必要です。 

 一方、海外で製造されたCBDの輸入に際しては、THC濃度が基準値以下であることをもって大麻に該当しないとする従来からの判断を継続するものと考えられますが、CBDの原料と最終商品とではその基準値が大きく異なることにご注意下さい。具体的には、原料中に許容されるTHC上限値に比べて、最終商品中に許容されるTHC上限値は数十倍低い値に設定されるであろうと考えられます。一方、従来から輸入時に必須であった茎種部位証明は現地確認が困難であり、国内の法改正後も茎種部位証明書が義務付けられるか否かについては議論があるところです。 

 交付日(令和5年12月13日)より1年以内に使用罪が有効となると、大麻の不正所持に加えて単純使用によっても「麻薬取締法違反」となり、これまでの5年よりも重い7年以下の懲役が課されます。医薬品としての大麻使用が可能となると、それを隠れ蓑にして入手しようとする者も出ることが予測され、濫用につながる危険性も生じることから、重罰化することによって大麻濫用を防ごうとの厚労省の強い決意の表れといえます。 

 海外で大麻を使用した場合、帰国後に国内で大麻使用罪に処されるか否かという衆議院・厚生労働委員会における西村智奈美衆議院議員の質問に対して、武見厚生労働大臣は、以下のような回答を行なっています(https://www.youtube.com/watch?v=iKhXVkxJmTo)。

 「麻薬関係法令において施用罪に国外犯処罰規定は適用されないために、海外で大麻を吸引しても、日本の麻薬及び向精神薬取締法の適用はされません。また、改正法案によります大麻施用罪創設後も、大麻を海外で吸引して帰国した人については、大麻を所持していなければ、仮に尿から大麻の代謝物が検出されても、直近で海外への渡航歴があり、国内での施用を裏づける証拠がない限り、立件されることはございません。ただし、大麻の所持や譲り受け等の行為については国外犯規定が適用されますので、当該各行為が滞在国において合法でない場合は各罰則が適用される可能性がございます。」

 

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