「大麻のような成分が含まれたグミを食べた人が体調不良となっている問題で、厚生労働省は20日、大麻由来成分に似せた合成化合物「HHCH」(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)を22日にも医薬品医療機器法(薬機法)の指定薬物に指定すると明らかにした。早ければ12月2日から所持や使用、流通が禁止される。 」
―毎日新聞ネットニュースから引用―
多くの報道で用いられる、いわゆる「大麻グミ」という表現、あたかも大麻から抽出した成分が含まれているかのような表現である。あるいは、「大麻由来の成分が含まれると称するグミやチョコレート」という、事実に反する可能性が高い表現もあった。上記の毎日新聞のネットニュースにある「大麻のような成分」という表現は、曖昧な不特定表現であるが、「大麻由来成分に似せた合成化合物」という表現はより正確な表記と言えよう。既に今年の7月に規制対象となった半合成カンナビノイドTHCHも、今回取りざたされている合成カンナビノイドHHCHにしても、大麻草には、そのものとして全く含まれていないか、含まれていても極々微量に過ぎない。従ってこれらの成分を大麻草からわざわざ抽出して、食品に混ぜて販売するなど経済合理性の欠片もない。つまり、これらは人工的に製造された合成化合物で、大麻草とは縁もゆかりもない。ただ単に、分子骨格が近似しているだけで大麻草由来ではないし、合成化合物である上に純度も低ければ、天然成分に比較しても身体に与えるダメージが大きく、かつ予想を超えるダメージをもたらすことも容易に想像できる。
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“日本法に準拠して合法であること”から抜粋(2023年7月記載)
カンナビノイドという名の違法ドラッグが市中に出回り、その危険性を理解しない若者が安易に手を出す深刻な状況が依然として存在します。ここではカンナビノイドに関連する用語を整理します。
(1)ヒィトカンナビノイド(phytocannabinoid)
大麻草に含まれている天然由来のカンナビノイドを指します。CBDやTHCが含まれます。大麻草以外から抽出されたCBDは天然CBDと称し区分けされているようです。
(2)エンドカンナビノイド(endocannabinoid)内因性カンナビノイド
“アナンダミド”と“2-AG”と呼ばれる体内に存在するカンナビノイドです。
(3)合成CBD
有機化学合成で作られた非大麻草由来のCBDのことです。CBDが市場に登場して間もない頃は、THCが含まれていないことがCBD製品を取り扱う上で最も重要な点と認識されていたこともあり、合成CBDであればそのリスクが完全に消去できるという観点から合成CBDが注目されました。しかし、合成CBDを作る際、合成過程の環境や処理に不具合があると、天然のCBDとはわずかに分子配置や結合の仕方が異なる異性体が生じることがあると言われています。原子の数や種類が同じでも、それらの位置が異なる分子は異性体と呼ばれ、各々電子の位置が異なります。 植物由来のCBDは、常に2番目の位置に二重結合がありますが(「デルタ2またはΔ2」)、 CBDが過剰に処理されたり、変性されたり、化学的に合成されたりすると、異なる異性体「タイプ」のCBDが生じる可能性があるわけです。このような天然由来のCBDとわずかでも異なる物質が生体内で安全かつ効果的に働くかという点については、現時点で明確な証明はないようです。
(4)半合成カンナビノイド
植物内にも存在し、化学合成でも生成されるカンナビノイドを「半合成カンナビノイド」といいます。
HHC :ヒドロキシヘキサヒドロカンナビノール
THCH:テトラヒドロカンナビヘキソール
THCB :テトラヒドロカンナビヘキソール
などが該当します。これらは、天然の大麻草に極々微量にしか含まれていないため、市場に出回る(出回った)ものは全てラボ内にて化学合成された可能性が高く、強い精神作用を持つことから現在では違法成分として使用、販売が厳しく規制されています。
(5)合成カンナビノイド
医薬品を除く合成カンナビノイドは、精神作用を有する人工の化学物質で、危険ドラッグ(新規精神活性物質:NPS)と呼ばれる薬物の一種です。NPSとは違法薬物と同様の効果を得ることを目的とし、違法に流通する精神作用物質のことです。仮にその物質がその時点で具体的な規制対象に含まれていなかったとしても、「精神作用を有する合成された有害物質」という点に何ら変わりはありません。
合成カンナビノイドは大麻草(カンナビス)に含まれる化学成分に似ているため、カンナビノイドと呼ばれているだけで、「人体の恒常性を維持するために有意義なフィトカンナビノイド」や「元々人体に存在する内因性カンナビノイド」とは全く異なる違法薬物です。使用量によっては人体に重篤なダメージを与えることが想定されます。規制対象となっているTHCHを水素化して合成したHHCHを含む製品はまだ販売されているようです。この合成カンナビノイドは強い精神作用があるとされていますが、具体的な規制対象となっていない(2023年9月時点)化合物であるため、引き続き販売されているようです。合成カンナビノイドについては、人体にどのような悪影響をもたらすか具体的な検証はされておらず、規制対象外の成分であっても安易な使用は控えた方が良いと判断します。