ドイツにおける大麻の合法化について

ドイツで嗜好目的のマリファナの限定的な使用を認める法案は、合法化の是非をめぐる激しい論議を経て、2月にドイツ下院で可決・成立娯楽目的の大麻使用が4月1日から合法化された。ラウターバッハ保健相は1日、「真の依存症を助け、子どもや若者の使用を防ぎ、闇市場と闘う方がいい」とXに投稿した。

(医療目的でのカナビスの使用は、既にオランダ、スペイン、イタリア、フランス、英国、カナダ、オーストラリアのほか、米国の一部の州でも認められている。ドイツでも2017年に医療目的でのカナビス使用を合法とする法律を成立させた。一部のがんや多発性硬化症などの重大疾病患者が対象。)

新法では、ドイツ国内居住者で18歳以上であれば、個人使用を目的に公共の場で25グラムまでカナビスを所持できる。18歳未満の所持、使用は引き続き禁止される。但し、学校、スポーツ施設、プレイグランド(公園、遊び場)から100m以内の場所では使用が禁止される。また、カナビスは3株まで自宅で栽培でき(cultivate up to 3 plants at home)、個人使用を目的に50gまでなら家で保管できることになる。
7月1日からは、所謂、“Cannabis social Club”がスタートし、この非営利組織は、各々500名の限定成人会員で構成され、会員はカナビスの栽培に積極的に関与する。つまり、クラブの会員は3株のカナビスを自宅で栽培し、その収穫により1ヶ月ごとに会員の需要を支える。会員は最大50gまで自宅でマリファナを保管できる。ドイツ居住者は、カナビスソーシャルクラブメンバーシップを取得し、クラブを通してのみマリファナを購入できるようになる。

注意しなければならないのは、今回の新法はドイツ居住者に限定され、旅行者は制度上いかなるマリファナも購入できない。また、現段階では、いかなるショップもドイツ居住者であれ、直接消費者に販売することはできない。コマーシャルセールのプラットフォームとしては、このソーシャルクラブが唯一のプラットフォームとなる。この制度はドイツ独特で他国に類を見ないが、思惑通りに機能するかは不安視する向きが多い。一朝一夕で出来上がる組織ではないし、消費が合法的栽培を当初から上回る可能性も高く、果たしてマッシブブラックマーケットを駆逐することに効果的に繋がるかはかなり怪しい。専門家は10%程度のドイツ人は栽培に関心があるとの見立てであるが、果たして品質を維持できるのか、コンタミネーション、品質低下、有害物質の混入等を考えた時、クラブごとの栽培、生産、販売では賄い切れず、遅かれ早かれ、委任を取り付けた大規模生産施設、ライセンスを取得した専門ショップが登場するのではないかと容易に推測できる。

2021年にマルタがEUで初めてマリファナを合法化し、2022年ルクセンブルク、今回ドイツはマリファナ使用を合法化する欧州最大の国になる見通し。他の近隣諸国も近年、同様の法律を検討している。オランダが少量のマリファナの販売と消費を認めているほか、スイスは昨年、北西部バーゼルで合法的なマリファナの販売を試験することを明らかにした。ドイツの発表に続き、隣国チェコも成人使用の合法化に向け準備している。

日本人として

日本人旅行者が仮にドイツでマリファナを購入し、所持し、使用した場合、現段階では、違法に生産されたブラックマーケットからの購入となり、且つ新法はマリファナの使用をドイツ居住者以外には認めていないため、明らかにドイツ法に抵触することになり、decriminalization非犯罪化、非刑罰化とはいえ、罰金等の処罰を受ける可能性が高い。また、日本の大麻取締法との関係でも、旅行者である日本人がドイツでマリファナを使用した場合、ドイツにおいても非合法であることから、日本の大麻取締法において処罰される可能性は十分にあると考えられる(大麻取締法24条の8と刑法2条の規定の趣旨)。ドイツへの旅行者は違法性を錯誤しないことが重要である。

ご参照:「お知らせ23年11月29日付けのAsia International Hemp Expo & Forum
ご注意:本記事は、新法をドイツ語で読み解いたものではなく、本件に関するドイツ及び海外のニュース等から趣旨を抜粋して記載したものであり、実際の法律と解釈等に於いて一部異なる可能性があること申し置きます。

また、DW(ドイツ公共放送)とB B Cの関連YouTubeを参考までに添付する。

最後に、外務省海外安全ページのコメントを紹介する。3番目の項目を十分に理解する必要がある。

注意喚起】ドイツにおける大麻の合法化と日本の大麻取締法、大麻の健康被害についてドイツでは、本年4月1日から、大麻(マリファナ)の所持、消費が条件付きで合法化されますが、ドイツ在留邦人の皆様、また、出張・旅行等でドイツを訪問される皆様におかれては、以下の点に十分ご注意ください。

1 ドイツでは、令和6年4月1日から、18歳以上の大麻の所持・消費が条件付きで合法化されます。しかし、これには、所持量、使用場所等の制限や、18歳未満の者への譲渡の罰則厳罰化なども含まれています。

2 日本では、大麻取締法によって、大麻の所持等が禁止されており、日本に大麻を持ち込もうとした場合等は、同法による処罰の対象となります。また、日本国外において、大麻をみだりに、栽培したり、所持したり、譲り受けたり、譲り渡したりすることを罰する規定があり、罪に問われる場合があります。

3 大麻を乱用した場合には、幻覚作用や記憶への影響、学習能力の低下等の健康被害が生じることも指摘されています。ドイツにおいても大麻の有害性が否定されたわけではなく、合法化はむしろ大麻における闇市場を縮小し、薬物関連の犯罪を減らすことを目的としている点に留意してください。

4 日本及びドイツの法令を遵守の上、トラブルに巻き込まれたり、御自身の健康を損ねたりすることがないように御注意ください。

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